グスタフ・マーラー作曲 交響曲第5番より第4楽章「アダージェット」

5月18日は私の大好きな作曲家の一人、マーラーの命日です。

それにちなんで、今日はこの曲を選んでみました。大好きな曲なので、選んではみたものの、

いやー、難しい!

どうプレゼンするのが一番わかりやすくて、効果的なんだろう???と思案していましたが、やはりこの曲は、この映画をご紹介するのが一番、世界観を伝えやすいと思いました。

映画「ベニスに死す」予告編

https://youtube.com/watch?v=P8snvOmA0Rc&feature=share

ベニスに死す [ ダーク・ボガード ]

元々、この映画自体は1971年にイタリアの巨匠、ヴィスコンティ監督が手がけた名作です。劇中通じて、マーラーの交響曲5番の4楽章、アダージェットが用いられており、とても独特な世界観が広がる名作です。2011年にデジタルリマスターされたみたいです。

私は大学2年の時に、この曲を演奏する機会があり、勉強のつもりでこの映画もレンタルビデオ屋さん(懐かしい!)で借りて観ました。しかし、当時の私は…

いよいよ、わからんがな…

というのが正直なこの映画の感想でした(゚∀゚)だって…

初老のおじさんが、美少年に恋をして、挙げ句の果てにはのたれ死ぬ…って話???

(確かに、美少年役のビョルン・アンドレセンの妖艶な美しさはほんとにハマり役。)

でも、あの頃から私も25年ほど歳をとり、大人になりました(^_^)v

今改めてこの(予告編ではありますが)映画の1シーンを観ると、ヴィスコンティ監督が、マーラーの生まれ育った環境幼少時のトラウマ、この曲を書いたときの精神状態までも、あたかも汲み取って、この作品に投影させたように感じてしまいます。

マーラーのアダージェットベニスに死すを組み合わせたこと自体が芸術。

愛と死、

天才の背徳感、

美を追い求め、そしてそれに手が届かないがゆえの狂気。

とでも言えましょうか…

では、これからは、この曲を作曲した頃の、マーラーについて触れてみます。

マーラーの運命の女性、アルマとの出会い

1902年にこの交響曲第5番をマーラーは完成させたのですが、実は同じ年にアルマ・シントラーという美しい女性に出会い、結婚しているんです。

マーラー42歳、アルマ23歳。

なんと年の差、20歳!!

アルマは美しく、作曲家として既に活躍していた言わば、前途有望なバリバリのキャリアウーマン。内向的なマーラーとは対照的です。

周囲に近づいてくる男性は数知れず、常に引くてあまた。芸術家との交流もあり、一気にマーラーの交友関係を広げてくれました。

まさに、マーラーにとってミューズ(女神)

クリムトとマーラーが出会う事ができたのも、アルマが取り持ってくれたおかげ。献身的にマーラーの音楽活動を支えました。

ちなみに…

クリムトのベートーヴェンフリーズについて過去のブログで触れましたが(後半にスクロールしてください)、これのお披露目式の際にマーラーが第九の指揮をしたというつながりもあるんです。

そんな愛に満ち溢れたこの時期に、「アダージェット」をアルマへの愛の調べとして、マーラーは作曲したのです。

届かない。アルマへのマーラーの思い

しかし、二人の関係は、そう順風満帆なものではありませんでした。

まあ、この年の差のせいもあると思います。それに、マーラーは「2人の作曲家は必要ない」と、常に命令的な態度で、アルマの作曲家としての活動を禁止していました。

今で言う、モラハラですよね。

案の定、アルマは他の男性と関係を持つようになります。

(マーラーが悪いと思いますけどね!)

そしてそれがマーラーの精神を蝕んでいきました。一晩中、アルマがそばにいることを確認しないと気が済まない強迫観念に苛まれて、精神学者フロイトのところに通っていたほどでした。

ここまで、「アダージェット」が出来上がった背景をざっと述べてきましたが、なんとなくでもマーラーの世界観が見えてきたでしょうか?

マーラーとアルマの関係を描いた映画もあります。気になる方はご覧になってみては?


愛と死、天才の背徳感、美を追い求め、そしてそれに手が届かないがゆえの狂気

まさに、マーラーのアルマに対する深層心理

このアダージェットは、美しい愛の調べではあるのですが、どこか愛情の向こう側にある憎しみのような狂気を孕んでいて胸が張り裂けそうになります。

俺はこんなに愛しているのに、どうしてお前は俺を愛してくれない!?

こんなマーラーの叫びのように聞こえてしまい、そして「ベニスに死す」の美少年に恋してしまったおじさんに重なってしまうのです…

今回は4楽章だけ取り上げましたが、ぜひ気合入れて、1楽章から聞いてみてください。

4楽章以外は、全ての楽章である意味、“狂気の沙汰“です( ̄▽ ̄)
だからなおさら4楽章の美しさが、恐ろしく、異様なものに感じてしまうのかも知れませんね♪

マラ5、私ならこれをチョイスするかな〜( ̄▽ ̄)
激アツのバーンスタインと、冷静沈着なウィーンフィルとの間違いない組み合わせ。


やっぱりマーラーは難しい!まだまだ勉強します!!!