ワーグナーを考える
この記事を書いている2月13日は、リヒャルト・ワーグナーの命日とのこと。
というわけで、今回はワーグナーについて語ってみましょう。
しかし、ワーグナーという作曲家を語ることは、とても難しいんですよね。その理由はワーグナーという作曲家が、とても特殊で、なんとも難しい政治的、歴史的な変遷をたどっているから...ですかね。
ワーグナー作品の特殊な点
ワーグナーはドイツの作曲家。時代としてはブラームスや、リストなど、いわゆる「ロマン派」時代の作曲家になります。
ワーグナーが残した作品自体はオペラ(ワーグナーは“楽劇”というジャンルとしています。)が多く、そのオペラも4〜5時間かかっちゃうようなものが多いんです。
とっても、壮大…(^-^;
長い作品は演奏に4日もかかるんですよ!ありえん…
ワーグナーは当時の作曲家としては稀有で、曲だけでなく、オペラの脚本も自分で書いています。
そして、しまいには自分の作品を演奏するための劇場まで建てるという…
世界観強すぎる…
作曲家、というより総合プロデューサー的な存在?かな。
なので、ワーグナーを聴く、演奏する、となるとオペラの「序曲」「前奏曲」だったり、場面を切り取った「ハイライト」のようになることがほとんどだと思います。
曲は好きなんですが、オペラの内容は難しいんですよね~私には理解できない...ごめんなさい。
ワグネリアンの存在
ワーグナー作品を熱狂的に崇拝するファンが歴史的にも、現在もたくさんいて、このような熱狂的ワーグナーファンのことをワグネリアンと呼びます。
これだけ聞くと、ワグネリアンって、
「ワーグナーのこと大好きなんだねー」
「ワーグナーに詳しいんだねー。」
「ワーグナーオタクですか?」
ってくらいしか思わないですよね。
でも、歴史的にこの「ワグネリアン」という言葉自体がネガティブな意味合いを持つようになってしまっています。その最大の理由が
ヒトラーがワグネリアンだったから。
ワーグナー自身も反ユダヤ主義を唱えていたことから、ヒトラーが巧みにワーグナーの曲をプロパガンダに用いていた時代があったのです。
ワーグナー作品を巧みに使った名作たち
(戦争映画の1シーンです。過激な描写があります。好みじゃない方はご注意ください。)
地獄の黙示録 ~ワルキューレの騎行~
キルゴア中佐率いる部隊がワーグナーの『ワルキューレの騎行』をオープンリールで大音量で鳴らしながら、数多くの武装したUH-1ヘリコプターが南ベトナム解放民族戦線の拠点であるベトナムの村落を大挙して襲撃する、この映画を象徴する有名なシーン。
地獄の黙示録 ~ワルキューレの騎行~ - YouTube
この作品は多くの賞をとって、名作と言われているフランシス・コッポラ監督「地獄の黙示録」の有名なシーンです。
この曲自体は聞き馴染みありますよね。この映画だけでなく他の作品や、CMなどにも使われています。なんか、戦闘体制!って感じで躍動感のある曲です。
これはワーグナー作のオペラ「ニーベルングの指環」内の「ワルキューレの騎行」です。
この作品の舞台は第二次世界大戦後のベトナム戦争。アメリカ兵が無防備なベトナムの民間人たちを襲撃するシーンです。
コッポラがこのシーンにワーグナーの曲を用いていることで、この映画の真の意図が明確に示されています。
「アメリカよ!君たちがやっていることはヒトラーと同じだ!」
そんな反戦の叫びがワルキューレのオペラと共に聞こえてくるようです。
The Great Dictator- Globe Scene
The Great Dictator- Globe Scene - YouTube
こちらも歴史的に有名な作品ですね。
チャップリンの「独裁者」からの1シーンです。
この作品はチャップリンが痛烈にヒトラー批判し、反戦を訴えている作品としてよく知られています。
ここで使われているのはワーグナー作のオペラ「ローエングリン」第1幕への前奏曲です。
ただ、チャップリンがここでこの曲をチョイスしたのは、ワーグナーから独裁者ヒトラーを想起させるためだけではないように感じます。
このシーン、とても美しく、純粋な旋律で、とてもはかなく、とても物悲しく感じてしまいます。
「音楽は悪くない!芸術は悪くない!
悪いのはそれを意図して扱う人間だ!」
喜劇王と言われる芸術家チャップリンは、こうも訴えたかったのでは…?と感じてしまうのは私だけでしょうか?
今日も長くなりました。最後まで読んでいただきありがとうございました。